(シドニー)―ブータン政府が2026年6月1日に政治囚2人を釈放したことは前向きな一歩だが、少なくともさらに28人を早急に釈放すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。
国連の人権専門家から拘束が問題視されていたチャトゥル・マン・タマン(Chatur Man Tamang、42)とハスタ・バハドゥル・ライ(Hasta Bahadur Rai、44)の両氏は、2008年に逮捕され、激しい拷問を受けた後、弁護人なしの裁判で反逆罪により終身刑を宣告されていた。
「手始めとなるべき今回の釈放は、2人の政治囚とその家族の苦しみを終わらせる点で、正しい方向への重要な一歩だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理ミナクシ・ガングリーは述べた。「ブータン当局は、現在も獄中で苦しむ少なくとも28人の釈放を早急に進めるとともに、劣悪な収容環境を改善すべきだ。」
ブータンでは、国内法により認定された政治囚が一般囚から隔離されて収容されている。大半がネパール語話者コミュニティに属しており、1990年代初頭にこのコミュニティが直面した、市民権の剥奪や国家暴力などの差別が吹き荒れた時期に関連する事件の被疑者だ。起訴され有罪判決を受けたのは、ブータンが民主化改革を導入した2008年以前のことだが、再審はまったく行われず、今もなお劣悪な環境下で拘禁されている。
ライとタマンの両氏は1990年、幼少期に隣国ネパールに難民として逃れた。当時は治安部隊による広範な人権侵害が行われており、ネパール語話者のブータン人9万人が国外追放されていた。2008年、2人は難民の帰還権を要求する亡命政治団体「ブータン共産党」のメンバーとしてブータンに帰国したところ、当局に逮捕された。釈放直後、2人はブータンから国外追放された。
釈放後のヒューマン・ライツ・ウォッチとのインタビューで、2人は逮捕後の軍による拘禁中に激しい拷問を受けたこと、また自白を強要させられ、中身を読んでいない供述書に無理矢理署名させられたことを詳しく述べた。裁判では弁護人がつくことはなかった。2人には終身刑が宣告された。ブータンでは仮釈放の可能性はない。
現在確認されている残りの政治囚28人のうち、大半が終身刑を宣告されている。11人は、2008年にさかのぼる両氏の事件とほぼ同一の事案だ。13人は1990年から2001年にかけて投獄されており、差別政策反対デモへの参加を理由に有罪とされた。うち7人は、抗議活動に参加したとされるブータン王立軍の元兵士で、僻地にあるラブナ軍刑務所に収監されている。シャルチョップ(Sharchop)族に属する政治囚4人は、ブータンの民主改革実施前に存在し、その後に解散させられた政党「ドルク国民会議(Druk National Congress)」への所属を疑われた。
タマンとライが釈放された当時、国連の恣意的拘禁作業部会は、国際法に照らした両氏の投獄の恣意性の有無について見解を発表する準備を進めていた。2025年、同作業部会はブータンの政治囚に関する3件について事例検討を行い、4つの根拠に基づき、拘禁の恣意性を認定した。この3人は現在も獄中にある。
2025年4月、ブータンとのEUの政治・貿易関係をめぐり大きな力を持つ欧州議会議員が、ブータン首相宛書簡で政治囚の釈放を求めた。EU外交筋も、同国との政治対話の一環としてこれらの事例を取り上げている。
また2025年、国連人権専門家6人がブータン政府宛の共同声明を発表し、「政治囚への食料・水・暖房・寝具・防寒着の支給が十分でないと伝えられている」こと、「被拘禁者が医薬品や医師の診察を十分に利用できずに苦しんでいる」ことに懸念を表明した。さらに、身体的な疾患を持つ人(拷問が疑われるケースもある)が「必要な治療を受けることができず、こうした状況が被拘禁者2人の死亡の一因となった可能性がある」ことにも懸念を示している。
こうした人権侵害が続くにもかかわらず、ブータンは「国民総幸福量(GNH)」の推進に尽力する進歩的な政府という国際イメージで売り出しており、海外投資の誘致にも積極的だ。
最近釈放された両氏は、首都ティンプー近郊のチェムガン(Chemgang)刑務所にある「反国家」棟の状況について語った。そこには、まだ釈放されていない政治囚18人が収容されている。囚人たちの食事や石鹸などの生活必需品は乏しく、近年では状況がさらにひどくなっていると語った。複数の囚人が健康を害しているが、治療をほとんど、あるいはまったく受けられていない。うち2人には精神疾患の症状がある。家族がブータン国外に住んでいる政治囚たちは、長年にわたり連絡を取ることができていない。タマン氏は、釈放までの10年にわたり、親族との間に連絡がなかったと語った。
2025年12月、政治囚のシャ・バハドゥル・グルン氏(Sha Bahadur Gurung、65)が獄死した。彼は、軍に在籍中のデモ参加を理由に、1990年から過酷な環境で悪名高いラブナ刑務所で終身刑に服していた。
「慈悲」といった仏教の概念を部分的に取り入れたブータンの法律では、終身刑の受刑者が釈放されるのは、国王が「キドゥ(kidu)」と呼ばれる王室の恩赦権を行使して減刑した場合に限られる。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ジグメ・ケサル・ナムギェル・ワンチュク現国王が、すべての政治囚を恩赦すべきだと述べた。
「長年にわたる不当な投獄の末にこの2人が釈放されたことは、彼らとその家族には喜びの瞬間であり、大切な人の釈放をこの瞬間も待っている他の政治囚の家族には希望の光だ」と、前出のガングリー局長代理は述べた。「ブータン当局は、『国民総幸福量(GNH)』の推進を掲げるのであれば、それにふさわしい行動を取り、人権上の義務を遵守し、この不必要な苦しみを直ちに終わらせるべきだ」。